10日間もの間、約100人のミュージシャンたちが寝泊りをし、朝から晩まで一日中気兼ねなく音楽の練習ができる環境って…?
山奥ではなくっても、そんな夢のような場所があるのです。
アルザスワインの生産地にあるRouffach(ルファック)の農業高等学校
音楽合宿が行われる場所は、フランス東部アルザス地方にあるRouffach(ルファック)という小さな町。
そこにある農業高等学校をまるまる借り切って合宿が行われます。
この地方はアルザスワインの生産地で、町からもブドウ畑の丘が見えます。町の真ん中の広場には教会があり、音楽祭や最後のコンサートは教会の中で行われます。石畳のある小さな町ですが、近くには病院や図書館、スーパー、丘の上にはお城もあります。合宿の期間中に、ルファックの町のお祭り「魔女祭り」が行われる年もあります。
アルザスにはコウノトリがたくさん生息しており、学校の周りにもたくさん飛んでいます。学校の屋根の上には大きなコウノトリの巣があり、「カカカカカカカ…」というその鳴き声は、まるで生徒たちの演奏に拍手をしているかのようです。
パリからルファックの合宿に参加する場合には、まずMulhouse(ムルーズ)というアルザスの駅まで電車で来ます。
ミュージカルタの合宿生たちがムルーズの駅に集合し、そこから音楽合宿参加者用の送迎バスで、ルファックの学校まで行くのです(帰りはルファックの学校からムルーズの駅までまたバスで送ってくれます)。
ルファックは小さな町なので、たくさんお店があるわけではありませんが、小型スーパー、パン屋、薬屋、雑貨店、カフェ、レストランなどは学校から徒歩圏内にあります。また、アルザスの農業高等学校であるだけに、学校内にはワインセラーがあり、アルザスワインをお土産に買うこともできます。
レッスンに疲れたらカフェにいったり、教会の中で涼んだり(この時期のアルザスはとても暑い)してもよいでしょう。また、ルファックの駅までは学校から徒歩約15分で行けるので、Mulhouse(ムルーズ)の町を観光したい、等の場合には、駅から電車に乗って行くこともできます。
音楽合宿中の宿泊施設、食堂は、レッスンルームは?
合宿中、ほとんどの生徒は農業高等学校内にある寮に宿泊します。
一部屋4人部屋で、部屋には二段ベッドが二つ、通常のベッドがひとつ、トイレが二つ、シャワーが二つついた洗面所があります。
4人部屋ですが、私の場合ルームメートはいつも二人だけ(合計3人)でした。だいたい同じ年齢の人同士がルームメイトになるように配慮してくれます。
未成年者と大人の宿泊する場所は分けられており、大人は未成年者の建物には入ってはいけないことになっています(例外的に、親子で参加している場合には一緒の部屋にしてくれる場合もあるようです)。
学校内には食堂があり、申し込めば3食がここで食べられます。ほとんどの学生がここで3食を食べますが、外部施設(ホテルなど)に宿泊している場合には、外で食事をしても構いません。ただ、合宿が始まるとあまりの忙しさに外でゆっくり食事をしている暇はなく、学校内の食堂で食べる方が便利です。しかも、食堂には唯一学生達がみな集まるので(外部に宿泊している先生達も昼食、夕食はよく食堂で食べています)、毎日ここで食べていると顔見知りもでき、海外の音楽友達をつくるいいチャンスです。
また学校内にはバーが設置され、大人は夜ここでお酒を飲むこともできます。合宿をオーガナイズしている若いスタッフさんや、他の大人の参加者、先生たちと語り合う場所になります。もちろん、大人は校外に自由に出られますので、一日のレッスンが終わった後には町の中にあるバーやカフェに友達や先生と飲みに行くのも楽しいですね。
どうしても知らない人との寮の相部屋が嫌な場合には、学校までの徒歩圏内にはホテルが3つほどありますが、先生方の宿泊のために満室の場合も多いので注意が必要です。あまり離れたホテルだと、車なしでは毎日の通学ができませんから、やはりベストは学校内の寮だと思います。場合によっては(お金を支払えば)、2人部屋等も可能かもしれません。また、外部に宿泊すると「外部生」となり、レッスンルームは無料ではついてきません。
レッスンルームは、生徒4人に対して1部屋が割り当てられます。ですので、同じレッスンルームの生徒同士で時間割を決め、どの時間帯に誰が部屋を使うかを決めるのがベストなやり方です。特にピアノコースの生徒は、きっちりと時間を決めておかなければ、いつレッスンルームに行っても誰かが弾いていて練習できないという状態になってしまいます。
この4人用のレッスンルームで、ひとり最低一日3時間は練習できることになっています。ピアノコース以外の生徒の場合、部屋が空いていない時には空き部屋を探してそこで練習をしたり、自分の部屋で練習することもあります。特に最後のコンサート前になると、朝8時頃から夜9時頃まで、いろいろな楽器の音がなりやみません。
このように、アルザスの農業高校が夏休みの間は音楽学校にかわるのです。
寮の部屋にはピアノが運び込まれ、レッスンルームに変身。
普段は農業について学ぶ教室は、音楽教室になります。
広大な農業高校の敷地のあちこちから、ピアノやバイオリン、フルートなどの音が10日間絶え間なく響き渡りますが、迷惑そうな顔もせずにコウノトリ達が「カカカカカ」と拍手で応援してくれます。