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フランス女性

海外赴任と駐在妻のキャリア。夫について海外にきたフランス人妻のキャリア構築の難しさと苦悩

投稿日:2017-03-28 更新日:

日本でも夫婦で共働きをするのが当たり前になってきていますが、フランスに比べるとまだまだ少ない方でしょう。
夫婦そろって働き続けるのが普通のフランスですが、海外赴任となるとそれについていくのはまだ女性の方が一般的です。

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Expat Communicationという、フランス人海外駐在員のためのサポート提供サービス会社が行ったアンケートによると、
回答をした3500人のうち90%が、女性の方がパートナーの海外勤務についてきたと答えています。
40%の男性が「女性についていってもよい」と答えていますが、実際に男性が女性の海外赴任についてきたというケースは9%のみだそうです。

彼ら達の学歴と収入に関する調査によると、海外赴任をきめた70%のカップルは同等の学歴をもっています。
つまり、フランスでは二人とも対等にキャリアを築いていたと思われます(出産と育児により、フランスでも女性のキャリア昇進は男性と全く同じにはいきませんが)。

ところが海外赴任となると90%のフランス女性が自身のキャリアをいったん中断し、パートナーについていく。
このようにカップルでの海外駐在では、男性の方が最も重要なキャリアを築く土台となっているケースが大多数で、フランスといえども男女平等にはほど遠い状況なのです。

海外でも働き続けられるだろうという幻想

海外勤務についていこうと決めたパートナーの62%が、「海外駐在は自分のキャリアにとって悪い」と答えてはいますが、
それでも67%のカップルが、海外駐在は成功するだろうと信じて出発します。

ついていく女性の方は、はじめ未知の国での新しい生活に夢と希望を抱き、「生活が落ち着いたらフランス国内と同じように海外で新しい仕事を見つけて働こう」と考えるのですが、実際にはどこの国でも簡単に仕事がみつかるわけではありません。

例えば、あるフランス人女性は、妊娠7か月の時にパートナーについてオーストラリアに行きました。

彼女は着いてすぐに仕事を探しましたが、赤ん坊が3か月になるとすぐに預けて仕事に復帰するフランスとは違い、オーストラリアでは通常女性の産休期間がとても長く、「なぜ妊娠中に仕事を探しているのか」理解してもらえなかったそうです。彼女はオーストラリアに出発する前、「私の学歴だったらすぐに仕事が見つかるだろう」と思っていたそうですが、それはフランスを出ると当てはまらない常識でした。

このようにフランスとの文化的な違い、言葉やビザの問題から、子供を持つ女性が働くのは容易ではない場合が、世界中には多くみられます。

海外でもキャリアの継続ができると思ってきたフランス人女性達は、ここで高い壁にぶつかるのです。

フランス人駐在妻が海外でも働き続けたい理由

パートナーの海外赴任についてきたフランス女性が働き続けたい理由はいくつかあります。
もちろん経済的な自立を保っていたいという理由もありますが、アンケートによると一番の理由は

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「自分のアイデンティティを保ち続けたい」。

男性にとっても女性にとっても、仕事は自分のアイデンティティの大部分を占めていることが多いのです。

「私はジャーナリストです、薬剤師です、弁護士です…。」

でももしこの肩書きを取ってしまうと、「私はいったいだれ…?」となってしまうのです。

日本でも同じではないでしょうか。出産後、仕事をやめたとたんに「○○さん」ではなく「△△ちゃんのママ」になってしまうことに対して違和感をもつ元キャリアウーマンは多いと思います。

その他に、働かないことで彼女達が感じる不安は

「孤独にどうやって打ち勝てばよいのだろう?」という不安。

夫が新しい国で毎日忙しく働き(付近の諸国への出張も増え不在気味になることも多いでしょう)、子供達が新しい学校に通い始めると、家に残される女性は非常に孤独を感じます。

また、暇な毎日への不安もあります(仕事をせず、毎日を楽しみのために暮らすというモデルに耐えられない人々もいるのです)。

そして最後に、自国に戻った際の「履歴書の空白期間」に対する恐怖。
再就職をする際には、パートナーの海外赴任につきそっていたとしても履歴書の空白期間はネックになるものです。

海外赴任の間に自分を見つめなおす

一方で、海外赴任中に自分自身を見つめなおす機会ができ、自分が親だということを再発見する人もいます。
仕事から解放され、子供達と過ごす時間ができた女性達の中には、「子供たちとほとんど一緒に過ごす時間がなかったあの時期、自分はいったいどうやっていたんだろう?」とふりかえる人も多いようです。

また、海外で仕事が続けられないかわりに、勉強や習い事をしたり、ボランティアに精を出す女性もたくさんいます。

どうしても働きたいがために、海外で自分の希望に合わない仕事にむりやりついた女性は、
仕事をしていない女性と同じくらい不満感を持っているというアンケート結果もでています。
そして長い間考えた末、結局は仕事をしないことを選択する人も多いとのこと。
海外駐在の間には新たに発見や経験をすることが非常に多くあるので、せっかくのこのいい機会に自分に合わない仕事をして閉じこもってしまいたくない、という結論を出すのです。

このように、海外赴任についてきたフランス女性のキャリアの構築は難しい問題です。
でも、たとえ出発する前に期待していたとおりにキャリアを築くことができなくても、それを失敗とは考えずに自分を再発見するチャンスととらえ、新たな道、その時にしかできないことを見つけることが大切なのでしょう。

これは、フランス人女性だけでなく日本人の駐在妻にもいえることだと思います。

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