ヴァネッサ パラディというフランス人の歌手がいます。
シャネルの香水の広告に抜擢されたりと子供のころからフランスでとても人気がある女性ですが、前歯の間に大きな隙間があって、私には彼女が美人とはあまり思えなかったものです。
これがアメリカの女優さんだったらすぐに歯の矯正をし、隙間のない完璧な歯並びにしたことでしょう。
でも、彼女は今でもすきっ歯のままです。
4人のパリジェンヌが書いた本
“How to be Parisian wherever you are”(Sophie Mas, Audray Diwan, Caroline de Maigret, Anne Berest著)
には、次のような一文があります。
欠点を残しておく。パーフェクトでない美しさを大事にする。
これがフランス女性の不思議な美しさの秘密なのでしょう。
この本を書いた著者の一人、Anne Berestが、Madame Figaroに寄稿したコラムが、このことをよく表していると思いました。
Madame Figaro 2015年10月30日、31日号
Anne Berest(作家)によるコラムより
私達は、自分が気に入った顔をもって生まれてくる幸運に恵まれている。
または、そんな幸運に恵まれていない場合もある。
幸いにも、人生はしばしば不公平を是正してくれる。
かわいい女の子たち、美貌のすべてを持って生まれてきた学校のアイドル達、美しくあることが、とんでもなく簡単であった彼女達…。
その彼女達も、ある時、その他の女の子たちにその輝きをさえぎられてしまった。
まさか、いつかそんなことが起ころうとは思いもせず。
「その他の女の子たち」。
それは他人との違いを切り札にした女性達、他人との違いを自分の商標にしてしまった女性達。
すごく目立つ眉毛、岬のようにとんがった鼻、ボサボサのブラシのような並びの悪い歯、
フィリップ・スガン(政治家)のような目の下の大きなクマを持つ彼女たち。
「その他の女の子たち」は、素晴らしいワインのように、素晴らしく熟していく。
若い子が呪う「自分の欠点」。しかし、大人の女性はそれを慈しむことを学ぶ。
「自分の欠点」とは、独自のキャラクターの強さの印なのである。
私達の欠点は、美に対する一定の定義を再考させてくれる:欠点は、自分自身の、(特に)一般的な他人の評価に対して、自分を肯定することを教えてくれる。自己肯定を非常に強くすることにより、それが一般的な美の定義に打ち勝つのである。
「10年後に懐かしむであろう今日の顔を、エンジョイしよう。」これが、今までに私が聞いた中で最高のアドバイスのひとつだと思う。
なぜなら、今この時を楽しみ、今現在ここで人生が私達にもたらしてくれていることに微笑もう、と言ってくれるのだから。
不満なことは永遠にある。でも、ないものではなく、今あるものに耳を傾けよう。
なぜなら、自分とは違う人物になりたいと望むことは、おびただしい悲しみの源であることは間違いないのだから。
その反対に、この「すばらしい私自身」になること。それが、素敵なこと。
そして、美に関していえば、不変の方法がある:
読書する、笑う、好奇心をもつ、バカなことをする、毎日を人生最後の日のように生きる…
バラ色のお尻とフレッシュな顔色が、なによりも美しいのだ。
これを読んで、なんだか考えさせられてしまいました。
毎日鏡をみてはシワやシミが増えたと嘆いてみたり、きれいな若い人たちと比べては、自分の顔に嫌気がさしたり。
でも大人は自分の欠点を慈しむことを学ぶべき。
他人との違い(欠点)を自分の商標としてしまう潔さを身に着けるべき。
それが、その人の魅力になってくる。
冒頭のヴァネッサ パラディは、まさに彼女のすきっ歯を自分のトレードマークにしてしまったのですね。
この美意識が、フランス女性が他の国の女性とは違う不思議な魅力を持つ理由なのでしょう。